天蚕紬の説明
天蚕紬の天蚕とは別名、山繭といわれる、ヤママユガ科の昆虫の繭です。その特徴は
独特の光沢を持ち、絹に比べて軽くて柔らかいというものです。また糸の中に空気が入っているので、保温性が非常に高いのも特徴です。
ただ天蚕紬といっても、100%天蚕のものはありません。大体、家蚕と天蚕、10対1の割合で混合されて織られています。
これは一つに天蚕が、染料に対する吸着率が悪く、濃く染まらない性質があるため、もう一つは天蚕があまりにも金額が高すぎるということです。この糸で織られた絹布はとても貴重で、普通の絹糸の数十倍の高値で取引をされているということです。もし100%天蚕のものでしたら、生地だけで100万は軽く超えるそうです。
なぜなら、天蚕は病気に弱く、通常の養蚕は難しいことや、戦後、天蚕の大好物である
クヌギ林が少なくなったなどの原因により、数そのものが少ないからです。
天蚕は、ヤママユガという絹糸虫が吐き出した日本原産の最高級の野蚕糸ということが言えます。また非常に丈夫で、耐久性にもすぐれています。
この天蚕の繭と家蚕の繭を混ぜ合わせ、手で紡いだ糸を緯糸に用いて、絹糸を経糸に用いて織ります。
染料は天然の草木染料、すなわち、梅、りんご、栗、しそ、柿、よもぎなどのを使って染められています。
上品な薄緑色の光沢があり、軽くて丈夫であたたかいもので、その気品のある見た目と柔らかな質感から、まさに繊維のダイヤモンドと言われる最高級織物原料で織られたのが、天蚕紬です。